Global Credit Bullets | 2026年7月27日(月)
先週、ECB(欧州中央銀行)は市場予想通り政策金利を据え置きました。一方、中東情勢は大きく緊迫化しました。今週開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)は、近年で最も予測が難しい会合の一つになりそうです。
FRB – 信認が問われる局面 7月のFOMCは、新議長のインフレ対応への姿勢に対する市場の懸念を高める結果となりました。政策金利は市場予想通り3.50~3.75%に据え置かれました。しかし、会合後のコメントは、6月会合後に市場が抱いていた印象とは対照的に、足元のインフレ加速に対する警戒感の乏しさを示す内容となりました。ウォーシュ議長は9月の利上げ可能性について明確なガイダンスを示さず、市場金利の上昇によって既にインフレへの対応が進んでいるとの見方を示した一方で、金融政策もそれに追随する必要があるとは強調しませんでした。総合インフレ率は足元で4%近辺と目標の約2倍の水準にあるものの、インフレに対し比較的落ち着いた評価を維持しています。市場はこれをうけて、米ドルは下落し、米国債イールドカーブは大幅にスティープ化しました。2年債と30年債の利回り格差は当日だけで15bp拡大しました。今後、景気指標の鈍化やFRBによる利上げ再開がなければ、イールドカーブのスティープ化はさらに続く可能性があります。 中央銀行 – 様子見姿勢を継続 BoEと日銀は、FRBに続いて政策金利を据え置き、それぞれ3.75%、1.0%を維持しました。BoEは経済活動を【弱い】と評価するなどハト派的な姿勢を示し、原油価格の上昇や財政懸念を背景にここ数週間で大きく上昇していた短期金利に安心感をもたらしました。一方、日銀は2026年後半の追加利上げの可能性を示唆したものの、具体的な時期については言及しませんでした。また、ハト派的なFRBを利用する形で為替市場へ介入し、円相場は週単位で大きく変動しました。ただし、金融引き締めが伴わなければ、その効果は一時的なものにとどまる可能性があります。 イラン – 長期化と地域拡大 イランを巡る紛争は長期化するとともに、関与する国・地域が広がっています。6月に米国とイランが締結した覚書は実質効力を失い、ホルムズ海峡周辺では依然として戦闘が続いています。さらに、フーシ派やイエメンも紛争に巻き込まれ、サウジアラビアへの攻撃やバブ・エル・マンデブ海峡およびスエズ運河周辺への脅威を強めています。過去3週間では、エジプト、ヨルダン、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーンに対する攻撃も発生しており、偶発的な事態発生リスクが高まっています。原油価格は依然として高水準日あるものの、3月の高値を下回っており、これは米国の発言から、合意への意欲が依然として高いことがうかがえるためです。しかしながら、世界の供給縮小がさらに進み、原油価格が一段と上昇するリスクは高まり続けていると考えています。 作成:Algebris Investments Global Credit Team
先週、ECB(欧州中央銀行)は市場予想通り政策金利を据え置きました。一方、中東情勢は大きく緊迫化しました。今週開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)は、近年で最も予測が難しい会合の一つになりそうです。
テクノロジー・セクターの不確実性への対応 ここ数か月で大きく上昇していた株式市場は上昇分の一部を失いました。年初来の相場上昇を牽引してきたAI・半導体関連銘柄が下落を主導したほか、中東情勢の緊張再燃を受けて原油価格が再び上昇しました。 これまでの上昇局面を主導してきたアジア市場は、下落局面でも主導しました。日本と韓国の株価指数は過去最高値を更新した後、調整局面入りしましたが、韓国と台湾は依然として年初来のパフォーマンスで他地域を大きく上回っています。 この調整の主な要因は、AIインフラ投資の拡大ペースや最終的な投資対効果に対する懐疑的な見方が強まったことにあります。これにより、地域全体で過密状態にあった半導体関連銘柄のポジションの解消が広がりました。 一方、米国市場は比較的底堅く推移しました。インフレ指標の鈍化に加え、銀行セクターを中心とする好調な第2四半期決算が支援材料となりました。主要株価指数は過去最高値を更新したものの、半導体株の下落により上昇幅は縮小しました。 FRB(米連邦準備制度理事会)は引き続きタカ派姿勢を維持しており、金融政策を巡る不透明性は依然として残されています。また、原油価格の上昇によってインフレへの警戒感が再び高まりました。 欧州市場は、景気敏感、資本財・産業、金融、防衛関連銘柄への資金シフトを背景に上昇し、過去最高値を更新しました。また、テクノロジー銘柄の構成比率が相対的に低いことも、半導体関連銘柄下落の影響を和らげる要因となりました。 年初来では依然としてアジア市場のパフォーマンスが他地域をリードしていますが、米国および欧州市場もプラス圏を維持しています。企業利益の拡大が、各市場におけるバリュエーションの圧縮を十分に相殺しています。 テクノロジー銘柄からディフェンシブ銘柄へのローテーション 過去1か月間、セクターローテーションが市場の主要テーマとなっています。2026年初来で最も好調だったテクノロジー・セクターへの市場心理は悪化する一方、ディフェンシブ銘柄が相対的に優位なパフォーマンスを示しています。 AIインフラ投資の拡大を追い風に、テクノロジー・セクターは2025年12月から2026年6月にかけて、S&P500で+67%、Euro Stoxx 600で+48%と、他を圧倒するパフォーマンスを記録しました。しかし、6月末以降は状況が一変し、テクノロジーは両指数の中で最もパフォーマンスの悪セクターとなっています。 投資資金はAI関連銘柄から急速に流出していますが、これは、AIインフラの過剰投資への懸念、巨額投資に対するリターンの不透明感、割高なバリュエーション、さらには需要の鈍化リスクを反映しています。OpenAIのIPO延期や中国系AIモデルとの競争激化も、市場の不安材料となっています。 もっとも、ファンダメンタルズは依然として堅調です。AI投資の持続性を測る重要な指標であるハイパースケーラー各社の設備投資(Capex)については、アナリストがコンセンサス予想を引き続き上方修正しており、少なくとも現時点では企業が投資を縮小している兆候は見られません。 第2四半期決算シーズンが始まり、ASMLとTSMCは市場予想を上回る業績を示し、将来見通しも引き上げましたが、市場の反応はむしろネガティブでした。 今後数週間で、多くの大手ハイパースケーラーやAIインフラ関連企業の決算発表が相次ぎます。今回の決算シーズンは、AI投資を支えるファンダメンタルズの強さが維持されているかを確認する重要な局面であり、市場がテクノロジー・セクターに対する見方を見直す契機となる可能性があります。 3310からProへ ― 半導体業界の生存競争 半導体技術の進化の速さを示す上で、Nokia 3310とiPhone 17 Proを並べて比較するほど分かりやすい例はないでしょう。世代を隔てて登場したこの2つの端末は、過去25年間で半導体産業がどれほど大きく発展してきたか、そして半導体関連企業にとって「イノベーション」が単なる技術革新ではなく「生き残りの条件」であることを物語っています。 当時のベストセラー携帯電話であったNokia 3310は、驚くほどシンプルな製品でした。その基板には、テキサス・インスツルメンツやSTマイクロエレクトロニクスをはじめとする限られたサプライヤーが供給する数種類の半導体チップが搭載され、それらが音声処理、メモリ管理、電源制御といったあらゆる機能を担っていました。一方、iPhone 17 Proはまったく異なる世界です。搭載されている半導体ははるかに高度かつ複雑で、5G通信、AI処理、高度な演算能力など、それぞれの特定の役割を担うチップを十数社に及ぶ専門企業が供給され、1台のスマートフォンを支えているのです。 この変化は、半導体産業そのものの構造変化を映し出しています。25年前であれば、垂直統合型の少数の半導体メーカーが電子機器の主要機能を幅広くカバーすることができました。しかし現在では、1社だけで半導体のバリューチェーン全体を担うことは不可能であり、チップ設計や製造は極めて専門性の高いニッチ分野へと細分化されています。 STマイクロエレクトロニクスは、この変化を象徴する好例です。かつてNokia 3310の基板に半導体を供給していた同社は、その後の技術進歩や新規参入企業との競争激化の中で、自動車の電動化、産業オートメーション、さらには現在のAI主導のデータセンター需要といった業界の波に適応し、自社の立ち位置を絶えず再構築してきました。 これこそが半導体業界の本質と言えるでしょう。この業界では、絶え間ない自己変革は報われる一方で、現状に甘んじる企業には代償が伴います。この業界では、イノベーションは単なる技術進歩ではなく、生き残るための手段そのものなのです。 作成:Algebris Investments’ Global Equity Team
イラン – 原油価格が反応しない中で進む情勢悪化 中東情勢の最近の展開は、これまで米国とイランの間で合意されていた覚書がもはや機能していないことを示唆しています。ミサイルやドローンによる攻撃が再開されているほか、フーシ派は地域インフラへの攻撃や、紅海を通る海上輸送を妨害することで、紛争をさらに拡大する可能性を示唆しています。 イランは湾岸地域の発電施設や海水淡水化設備を攻撃し、一方で米国も攻撃対象をイラン国内の重要インフラへと拡大しています。それにもかかわらず、原油価格は3月に記録した高値を大きく下回る水準にとどまっています。ホルムズ海峡を通過する船舶数がほぼゼロに近い水準まで減少しているにもかかわらず、市場は比較的落ち着いた反応を示しています。こうした実際の供給網への影響と市場価格との乖離は、依然として説明が難しい状況です。 ECB – 今回は据え置き、焦点は9月会合へ ECBは木曜日の理事会で政策金利を据え置くとの見方が広く予想されています。足元のインフレ指標が比較的落ち着いた内容となっていることに加え、仕入れコスト上昇圧力も和らいでおり、追加利上げの必要性は低下しています。 しかし、中東情勢の再びの緊迫化は、インフレ上振れリスクを高める要因となっています。現時点の原油・天然ガス価格は、ECBが想定する基本シナリオおよびストレスシナリオの範囲内に収まっていますが、エネルギー供給の混乱が長期化した場合、市場はさらなる金融引き締めの可能性を高く織り込み始めると考えられます。特に市場では、9月会合での利上げ確率を80%超と織り込んでいます。 もっとも、地政学情勢は依然として流動的であり、景気減速リスクとエネルギー価格上昇によるインフレ圧力とのバランスも不透明であるため、ECBは今回も今後の政策方針について明確なシグナルを示さない可能性が高いと考えられます。 英国 – バーナム新政権が始動へ アンディ・バーナム氏が月曜日に英国首相へ就任し、直ちに組閣作業を開始すると見込まれています。新政権の最優先課題は、生活費高騰への対応になるとみられています。また、地域への投資拡大や地方分権の推進、経済再生を柱とする「No.10 North」構想の実現も重要政策になる見通しです。さらに、社会福祉も主要政策の一つになると考えられています。 財務大臣には予想に反してジョン・ヒーリー氏が任命されました。 欧州 – 選挙が再び市場の注目テーマに 2027年の選挙サイクルが近づくにつれ、欧州では政治リスクが再び市場の注目を集め始めています。特にフランスとイタリアの動向が注目されています。 フランスは、厳しい財政状況の中で選挙戦に突入します。財政赤字はGDP比5%超、政府債務残高は2027年までにGDP比120%近くに達すると予想されています。 一方、イタリアは短期的には比較的良好な財政状況からスタートします。財政赤字はGDP比3%程度にとどまる見通しですが、高水準の政府債務に加え、EU復興基金(Recovery Fund)による支援が終了することから、EU資金による支出が減少した後も、投資と経済成長を維持できるかが重要な課題となります。 作成:Algebris Investments’ Global Credit Team