テクノロジー・セクターの不確実性への対応
ここ数か月で大きく上昇していた株式市場は上昇分の一部を失いました。年初来の相場上昇を牽引してきたAI・半導体関連銘柄が下落を主導したほか、中東情勢の緊張再燃を受けて原油価格が再び上昇しました。
これまでの上昇局面を主導してきたアジア市場は、下落局面でも主導しました。日本と韓国の株価指数は過去最高値を更新した後、調整局面入りしましたが、韓国と台湾は依然として年初来のパフォーマンスで他地域を大きく上回っています。
この調整の主な要因は、AIインフラ投資の拡大ペースや最終的な投資対効果に対する懐疑的な見方が強まったことにあります。これにより、地域全体で過密状態にあった半導体関連銘柄のポジションの解消が広がりました。
一方、米国市場は比較的底堅く推移しました。インフレ指標の鈍化に加え、銀行セクターを中心とする好調な第2四半期決算が支援材料となりました。主要株価指数は過去最高値を更新したものの、半導体株の下落により上昇幅は縮小しました。
FRB(米連邦準備制度理事会)は引き続きタカ派姿勢を維持しており、金融政策を巡る不透明性は依然として残されています。また、原油価格の上昇によってインフレへの警戒感が再び高まりました。
欧州市場は、景気敏感、資本財・産業、金融、防衛関連銘柄への資金シフトを背景に上昇し、過去最高値を更新しました。また、テクノロジー銘柄の構成比率が相対的に低いことも、半導体関連銘柄下落の影響を和らげる要因となりました。
年初来では依然としてアジア市場のパフォーマンスが他地域をリードしていますが、米国および欧州市場もプラス圏を維持しています。企業利益の拡大が、各市場におけるバリュエーションの圧縮を十分に相殺しています。

Source: Algebris Investments, Bloomberg Finance L.P, data as 17/07/2026. Performances in local currencies
テクノロジー銘柄からディフェンシブ銘柄へのローテーション
過去1か月間、セクターローテーションが市場の主要テーマとなっています。2026年初来で最も好調だったテクノロジー・セクターへの市場心理は悪化する一方、ディフェンシブ銘柄が相対的に優位なパフォーマンスを示しています。
AIインフラ投資の拡大を追い風に、テクノロジー・セクターは2025年12月から2026年6月にかけて、S&P500で+67%、Euro Stoxx 600で+48%と、他を圧倒するパフォーマンスを記録しました。しかし、6月末以降は状況が一変し、テクノロジーは両指数の中で最もパフォーマンスの悪セクターとなっています。
投資資金はAI関連銘柄から急速に流出していますが、これは、AIインフラの過剰投資への懸念、巨額投資に対するリターンの不透明感、割高なバリュエーション、さらには需要の鈍化リスクを反映しています。OpenAIのIPO延期や中国系AIモデルとの競争激化も、市場の不安材料となっています。 もっとも、ファンダメンタルズは依然として堅調です。AI投資の持続性を測る重要な指標であるハイパースケーラー各社の設備投資(Capex)については、アナリストがコンセンサス予想を引き続き上方修正しており、少なくとも現時点では企業が投資を縮小している兆候は見られません。
第2四半期決算シーズンが始まり、ASMLとTSMCは市場予想を上回る業績を示し、将来見通しも引き上げましたが、市場の反応はむしろネガティブでした。
今後数週間で、多くの大手ハイパースケーラーやAIインフラ関連企業の決算発表が相次ぎます。今回の決算シーズンは、AI投資を支えるファンダメンタルズの強さが維持されているかを確認する重要な局面であり、市場がテクノロジー・セクターに対する見方を見直す契機となる可能性があります。


3310からProへ ― 半導体業界の生存競争
半導体技術の進化の速さを示す上で、Nokia 3310とiPhone 17 Proを並べて比較するほど分かりやすい例はないでしょう。世代を隔てて登場したこの2つの端末は、過去25年間で半導体産業がどれほど大きく発展してきたか、そして半導体関連企業にとって「イノベーション」が単なる技術革新ではなく「生き残りの条件」であることを物語っています。
当時のベストセラー携帯電話であったNokia 3310は、驚くほどシンプルな製品でした。その基板には、テキサス・インスツルメンツやSTマイクロエレクトロニクスをはじめとする限られたサプライヤーが供給する数種類の半導体チップが搭載され、それらが音声処理、メモリ管理、電源制御といったあらゆる機能を担っていました。一方、iPhone 17 Proはまったく異なる世界です。搭載されている半導体ははるかに高度かつ複雑で、5G通信、AI処理、高度な演算能力など、それぞれの特定の役割を担うチップを十数社に及ぶ専門企業が供給され、1台のスマートフォンを支えているのです。
この変化は、半導体産業そのものの構造変化を映し出しています。25年前であれば、垂直統合型の少数の半導体メーカーが電子機器の主要機能を幅広くカバーすることができました。しかし現在では、1社だけで半導体のバリューチェーン全体を担うことは不可能であり、チップ設計や製造は極めて専門性の高いニッチ分野へと細分化されています。
STマイクロエレクトロニクスは、この変化を象徴する好例です。かつてNokia 3310の基板に半導体を供給していた同社は、その後の技術進歩や新規参入企業との競争激化の中で、自動車の電動化、産業オートメーション、さらには現在のAI主導のデータセンター需要といった業界の波に適応し、自社の立ち位置を絶えず再構築してきました。
これこそが半導体業界の本質と言えるでしょう。この業界では、絶え間ない自己変革は報われる一方で、現状に甘んじる企業には代償が伴います。この業界では、イノベーションは単なる技術進歩ではなく、生き残るための手段そのものなのです。

作成:Algebris Investments’ Global Equity Team
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