マーケットビュー - グローバルエクイティ

Global Equity Bullets | 2026年10月28日(水)

市場は、表面的には安定しているように見えるものの、その裏では大きな動きが生じています。AIテーマを巡るポジションが急速に巻き戻されたことで、市場がAIの「勝ち組」企業を見る視点も変化しており、これまでの野心的な成長期待から、収益化や設備投資の資金調達へと焦点が移っています。同時に、個人消費の弱さやGLP-1(肥満症治療薬)に対する懸念が将来の成長期待を押し下げる一方、米国の資本市場は引き続き、その規模、流動性、適応力の高さを示しています。
2026年10月28日(水)

市場の内側で進む変化

グローバル株式市場は、10月を月初とほぼ同水準で終える見通しです。しかし、表面的な安定とは裏腹に、市場内部では大きな動きがみられました。

米国では、S&P 500指数は月間でほぼ横ばいとなる見通しですが、その内訳をみると大きなローテーションが起きています。AI関連銘柄を除いたS&P 500指数は10月に約6%上昇し、エネルギーと生活必需品セクターはいずれも二桁の上昇となりました。一方、情報技術とコミュニケーション・サービスはともに5%超下落しました。米国債市場も非常にボラティリティの高い展開となりました。10年国債利回りは一時5.3%を上回った後、約40bp低下しました。フランスの財政問題やAI関連銘柄への売り圧力を背景に、投資家が安全資産を求めたことが要因となりました。

欧州では、フランスの公的債務の持続可能性や政治的不透明感への懸念から、フランスとドイツの10年国債利回り差が170bpを超え、2011年以来の高水準まで拡大しました。株式市場は月初に銀行株主導で下落しましたが、その後は正常化し、STOXX Europe 600指数は月間でほぼ横ばいとなる見通しです。

アジアでは、MSCI Asia Pacific指数が10月に6%超下落しました。特に韓国株の下落が大きく影響しました。企業業績は引き続き堅調であるものの、AIに対する投資家心理の悪化を受け、バリュエーションが低下したことが主な要因です。

Drivers of 2026 YTD equity returns (local currency) 
 Source: Algebris Investments, Bloomberg Finance L.P., data as at 26 October 2026. Performances in local currencies.
AIの勝ち組 vs AIの負け組

AIトレードは振り出しに

「AIの勝ち組 vs AIに脅かされる銘柄」のペアトレードは、2026年初来の上昇分をすべて失いました。

年初から6月下旬にかけては、AIの恩恵を受ける銘柄が、AIの普及に脅かされる銘柄を大きく上回って推移し、そのパフォーマンス差はほぼ一貫して拡大しました。しかし、6月下旬をピークにこの傾向は反転し、8月までにパフォーマンス差はピーク時の半分程度まで縮小しました。9月から10月中旬にかけては一旦下げ止まる動きがみられたものの、その後再び差が縮小し、現在では年初の水準まで戻っています。言い換えると、AIの勝ち組の相対的な優位性は、年初来でほぼ失われた形です。

この動きは、AI関連銘柄に積み上がっていた投資家のポジションが急速に巻き戻されるとともに、市場がAIの「勝ち組」企業を評価する視点が変化していることを示しています。現在、投資家の関心は、これまでの野心的な成長期待から、AI投資を実際にどのように収益につなげるのか、また巨額の設備投資をどのように資金調達するのかという点へ移っています。

一方、今回の幅広い売り局面では、個々の企業のファンダメンタルズにかかわらず多くの銘柄が売られたため、一部の質の高い銘柄も魅力的なバリュエーションまで下落しています。こうした銘柄を見極めるうえでは、銘柄選別とボトムアップでの企業分析が重要となります。


Source: Goldman Sachs Global Investment Research, data as at 20 October 2026.  

市場は “Lovin’ It” とはいかず

マクドナルドの株価は年初来で約20%下落しており、このまま推移すると2002年以来最悪の年間パフォーマンスとなる見通しです。予想PERは約18倍まで低下しており、コロナ禍を除けば過去10年間で最も低い水準となっています。一方、コンセンサス予想では2026年の売上高は5%増加すると見込まれており、過去10年間でトップ3に入る成長率です。それにもかかわらず、なぜ株価は低迷しているのでしょうか。

背景にあるのは、業績そのものの急激な悪化ではなく、バリュエーションの切り下がりです。個人消費の弱さやGLP-1(肥満症治療薬)に対する懸念を背景に、投資家は将来の成長率に対する期待を引き下げています。

特に低所得層では消費を抑える動きがみられます。米国の既存店売上高は第1四半期に4%増加しましたが、第2四半期はわずか0.8%の増加にとどまりました。また、経営陣は第3四半期について小幅な減少を予想しています。海外市場は米国よりも底堅く推移しているものの、売上成長が鈍化する方向性は明確になっています。

もう一つの要因が、新たなタイプの肥満症治療薬であるGLP-1です。現時点で確認されているのは、顧客そのものの減少というよりも、注文内容の変化です。GLP-1を使用する成人では、糖分を多く含む飲料の消費を減らし、ハッピーミール(子供向けの小さめのセット)、チキンマックナゲット、フィレオフィッシュなど、より少量でタンパク質を多く含む商品を選ぶ傾向がみられます。

こうした変化に対応するため、同社はボウルメニュー、グリルチキン、エッグバイツなどの商品を検討しています。したがって、GLP-1によるリスクは顧客そのものを失うことよりも、1回当たりの注文量・注文金額が小さくなることにあると考えられます。市場は、こうした影響が実際の数値に表れる前から株価に織り込み始めています。


Source: Bloomberg Finance L.P., data from 2001 to 2026, as of 26 September 2026 

記録更新が続く米国資本市場

米国の金融市場では、極めて活発な動きが続いています。SpaceXは約860億ドルを調達する過去最大規模のIPOを実施し、OpenAIはプライベート市場での1,220億ドルの資金調達コミットメントを確保しました。これは、特にテクノロジーやAI分野に対する極めて旺盛な投資意欲を示しています。

企業による資本配分も過去に例をみない規模に達しており、Nvidiaは自社株買いプログラムを1,500億ドル拡大しました。M&A市場も活発な状況が続いています。その例として、サウジ政府系ファンドなどの投資家連合によるElectronic Artsの550億ドルでの買収や、Union PacificによるNorfolk Southernの850億ドルでの買収提案が挙げられます。

資産運用業界でも記録的な動きが見られ、VanguardのS&P 500 ETFは、運用資産残高が1兆ドルを超えた史上初のETFとなりました。こうした一連の動きは、米国資本市場の規模、流動性、そして環境変化への適応力の高さを示しています。

US Quarterly Equity Net Issuance
 Source:  US Federal Reserve, Algebris Investments, data as at 22 October 2026.  

作成:Algebris Investments Global Equity Team

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